Vol.018
宮城県の北東部に位置する南三陸町は、東を志津川湾、三方を山に囲まれた、まさに海里山が一体となった地域です。今回のみやとりっぷでは、自然が生み出した美味をはじめ、人々のつながりや太古の歴史ロマンなどをご紹介します。
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南三陸町のグルメを楽しんだり、お土産を探すなら、志津川地区にある「南三陸さんさん商店街」へ。商店街は「サンサンと輝く太陽のように、笑顔とパワーに満ちた南三陸の商店街にしたい」というコンセプトのもと、2012年に仮設商店街としてオープン。その後、2017年に移転して現在のかたちで本格オープンし、地元の旬の逸品を味わえる飲食店、志津川湾で水揚げされた魚介類がそろう鮮魚店、ご当地キャラクターのグッズが手に入る雑貨店など、20店舗以上が軒を連ねています。
木の温もりが感じられる商店街の建物は、「美人杉」といわれる南三陸杉を使用しており、新国立競技場を設計したことなどで知られる建築家・隈研吾氏が監修したものです。
敷地内には、志津川湾の特産であるタコのモチーフが至るところに。「置くと試験にパスする」といわれるオクトパス君は、縁起物として受験生に大人気です。また、モアイ像も設置されており、これは東日本大震災からの復興を願ってチリのイースター島から贈られたもの。地域の魅力が描かれた宝船とともに格好の記念撮影スポットとなっています。
今回のみやとりっぷでは、南三陸さんさん商店街の多彩な店舗の中から「食楽 しお彩」「菓房 山清」「雑貨と珈琲の店 サタケ」をご紹介します。
宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町201-5[ 地図 ]
HP:https://www.sansan-minamisanriku.com
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Tel.0226-25-8903(さんさん商店街事務局)
南三陸町が面する志津川湾は、森林の栄養を蓄えた水が注ぎ込み、さらに黒潮や親潮、対馬海流が交じり合う国内有数の漁場で、魚介の宝庫として知られています。
その新鮮な海の幸を思いきり堪能できるのが、町の名物「南三陸キラキラ丼」です。「地域の豊富な魚介を活かそうと、2008年に誕生しました。ご当地の丼は今でこそ一般的ですが、当時は珍しかったんですよ!」と話してくれたのは、南三陸さんさん商店街にある「食楽 しお彩」の後藤さんです。
南三陸町出身の後藤さんは仙台の料理店で修行後、町内の和食料理店に勤め、2007年に丼料理をコンセプトにしたお店を開店しましたが、東日本大震災の津波で店舗が流失。その後、キッチンカーでの揚げ物・お惣菜の移動販売などを経て、2017年に現在の店舗をオープンしました。
後藤さんは「丼料理を中心に、おいしい食を通じて、みなさんを笑顔にしたいと思っています」といい、その言葉通り、店内はアットホームな雰囲気で、従業員の女性たちも元気に笑顔で接してくれました。
店の一番人気は、やはり「南三陸キラキラ丼」。キラキラ丼は季節ごとに具材が変わりますが、今回は4月下旬まで提供される、1日30食限定の「南三陸キラキラ春つげ丼(2,000円税込)」を紹介します。「旬のおいしさで、春の訪れを感じてもらえれば」と後藤さん。志津川湾で水揚げされたタコ、ホタテ、生めかぶ、メダイやヒラメの白身魚など、旬の魚介が贅沢に盛り付けられています。
口の中に広がるタコやホタテの旨味、生めかぶのコリコリとした食感はご当地ならではの新鮮さで、町の特産である春告げ野菜の爽やかな風味も楽しめました。
ほかにも同店には、「まぐろづくし丼(2,000円税込)」や「ふっくら穴子丼(1,600円税込)」など、地域の鮮魚を活かした丼や、「たこつぼラーメン(1,100円税込)」といった珍しいメニューまで豊富にラインナップ。南三陸町の自然がもたらす美味を味わうことができます。
宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町201-5(南三陸さんさん商店街内)[ 地図 ]
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Tel.0226-46-1087
南三陸さんさん商店街で、和菓子、洋菓子など多彩な商品を販売している「菓房 山清 南三陸本店」。1925年、初代が旧志津川町(現南三陸町)に店を構え、手焼きせんべい、飴、バナナ焼きなどの和菓子を手掛けたのがはじまりで、その後、洋菓子なども手掛けるようになりました。
今回は同店で、専務の山内さんにお話を伺いました。「地域の厳選した原材料を使うことで、お菓子専門店ならではのこだわりを大切にしています」と山内さん。
その商品のひとつが、東北一のいちごの生産量を誇る宮城県のブランド果実「仙台いちご」を贅沢に使用した、「仙台いちごのバターサンド(200円税込)」。仙台いちごをジャムのように煮詰めた特製コンフィチュール(果物を砂糖と一緒に煮詰めて作るもの)、そしてホワイトチョコとバターをミックスしたフレッシュなクリームを、フレッシュバター100%のサクサクしたクッキーでサンド。いちごの酸味、クリームの甘味が絶妙にマッチしたおいしさは、甘い物が苦手な方にも好評です。
また、南三陸本店を訪れたら、ぜひ食べたいのが「タコぷりん(270円税込)」。焼きたてをその場で食べられるのは、この店舗だけです。タコぷりんは、志津川湾でアワビやウニを食べて育ったタコ、蔵王の牛乳など、選りすぐりの素材で作られたキッシュで、ホカホカのサクッとしたパイ生地と、プリッとした大粒のタコが新食感。タバスコをかけていただくのもおすすめで、ビールやワインにも合いそうです。
山清は、東日本大震災で本社や工場、店舗が被災。事業を再開するための土地が南三陸町にはなかったため、登米市へ工場や本社を移転しました。「それでも、ずっとこの場所で店を続けてきたので、南三陸で絶対店舗を再開したいと思っていました」と振り返った山内さん。まもなく創業100年を迎える同店ですが「常に新しい商品づくりに挑戦して、何度訪れても楽しい店にしていきたいです」と今後を見据えていました。
宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町201-5(南三陸さんさん商店街内)[ 地図 ]
HP:https://www.kabo-yamasei.com
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南三陸さんさん商店街の駐車場に面した「雑貨と珈琲の店 サタケ」は、町内の新聞配達店を引き継ぐ形で、「NEWS STAND SATAKE」として2017年にオープン。日中は珈琲と雑貨の専門店、夜間は新聞配達店として営業を続け、2021年6月に現在の店名へ変更しました。「新聞配達店の営業がない日中の店舗を活かそうと、雑貨とコーヒーを取り扱うようになりました」と店の成り立ちを説明してくれたのは、マスターの長井さんです。
「一杯の中に、気持ちを落とし込みたいと思っています」と長井さんが話すブレンドコーヒー(450円税込)は、自家焙煎の前後に、不良豆を一つひとつ丁寧に取り除くハンドピックを何度も繰り返すなど、手間暇をかけて仕上げられます。長井さんは「“気にしい”な性格なので、しっかりやらないと気が済まないんですよね」と笑っていました。
おすすめは同店オリジナルブレンドの2種類。深煎り特有の苦味とほんのりした甘味を感じられる「夜ふかしブレンド」、チョコレートのようなコクがある「なぎさブレンド」で、年間を通して提供されています。どちらも雑味がない、豆本来の味を楽しむことができ、長井さんが「今後、力を入れていきたい」という自家製ケーキにもぴったりです。
店内に並ぶ木工品やアクセサリーといった雑貨は、南三陸や登米の作家のもの。長井さんが作家とコミュニケーションを取りながら生まれた作品ばかりです。「私がお客さんの声を作家さんに届けることで、創作意欲が高まり、一緒に地域を盛り上げていければと思っています」と話していました。
棚に並ぶかわいらしい模様やフォルムの食器は、長井さんお気に入りのポーランド食器。店内で提供するコーヒーのカップとして使用していたところ、お客さんから「売って欲しい」という声が多くなり、取り扱うようになったそうです。
さまざまな味やアイテムに出会える同店。最後に理想の店を伺うと、「ふつうの店にしたいですね」という意外な答えが。「商店街の目玉として、キラキラ丼やモアイ像といった非日常的な魅力も大切にしつつ、もっと日常に寄り添った商品やサービスがこれからの暮らしには必要だと思います」と口にし、「地元の人と何気ないことを話したり、何もなくても集まったり、昔の商店街のような居心地のいい場所にしたいです」と「ふつう」という言葉の意味を明かしてくれました。
宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町201-5(南三陸さんさん商店街内)[ 地図 ]
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「南三陸ワイナリー」は、2020年10月、志津川湾を間近に臨む海辺にオープンしました。醸造所とショップが入る施設では、10種類ほどの南三陸ワイナリーのワインをはじめ、ワインに合う地元食品や工芸品などを手に入れることができ、月ごとに設定されるランチ営業日には、地元漁師がシェフとして腕を振るう料理を満喫することもできます。
「このワイナリーを、地域の魅力をつなぐ拠点にしたいですね」と話すのは、南三陸ワイナリー株式会社の代表取締役・佐々木さんです。静岡県の大手楽器メーカーに務めていた佐々木さんが、このワイナリーのプロジェクトに参加したのは、2019年のこと。きっかけは、被災地を回った震災ボランティアの経験でした。「いずれ建物や道路などインフラは復旧しても、新しいことをはじめないと賑わいは戻らないのではないかと思うようになりました」とのこと。
その思いに突き動かされて、佐々木さんは2014年に仙台に移住。職人とものづくりをする仕事の中で、ワインの奥深さを知ったといいます。「『神の雫』というワインを題材にした漫画の原作者の方と、日本人のワインスタイルに合ったワイングラスを作ることになりました」と佐々木さん。「ワインは誰かと食事や会話を楽しみながら飲まれることが多く、ワイングラスは必ずペアで買われるんです。それにワイン好きはそのワインが生まれた場所に関心が高いので、ワインを通して多くの人に地域の魅力を発信できると思いました」と話していました。
「海と山が近いのが南三陸町の特徴です。志津川湾では美味しい魚介類が獲れますし、山には牧場もあります。何よりこだわりを持ったさまざまな人がいるので、この地域の可能性はまだまだ広がります」と語る佐々木さんは、町全域にワイン造りを広げており、志津川地区にはこのワイナリー、入谷地区と歌津地区にはぶどう畑、そして戸倉地区ではカキ漁師と協力し、海中熟成にも取り組んでいます。
南三陸ワイナリーで醸造されるワインは、志津川湾のカキやタコに合う、辛口の味わいが特徴です。近年は自社のぶどう畑で醸造したワイン造りも本格化し、「ミネラル感があり香りも豊かで今後さらに期待が膨らみます」と佐々木さんは話します。そのシャルドネは、昨年は250本ほど造られて即完売となるほど評判。今年は1,000本ほど用意することができたそうで、今年4月頃に出荷される予定です。
宮城県本吉郡南三陸町志津川字旭ケ浦7-3[ 地図 ]
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南三陸町は古生代ペルム紀(約2億6,000万年前)から中生代ジュラ紀(約1億5,000万年前)までの地層が広がっている、化石の町です。
特に歌津地区では、たくさんの化石が見つかっています。1970年には世界最古の魚竜「ウタツギョリュウ」の化石が発見されるなど、異なる時代に生息していた3種の魚竜の化石が見つかった場所として世界的にも有名です。「魚竜」とは1億5千万年もの間、世界の海に生息していた爬虫類。魚やイルカのような見た目で、大きな目が特徴です。
今回は南三陸町教育委員会事務局の三浦さんに、歌津総合支所内に開設されている「化石展示室」を案内していただきました。化石展示室では、かつて旧歌津町にあり、東日本大震災で全壊した「魚竜館」に展示されていた、さまざまな古代生物の化石標本を間近で見ることができます。
「歌津のように、狭い範囲に異なる時代の地層が露出している例は国内でも珍しく、とても化石が見つかりやすい場所なんです」と三浦さん。室内には、イラスト付きの説明パネルもあり、貴重な化石や標本を見ながら、古代生物の生態や歴史を学ぶことができます。
アンモナイトの化石もずらりと並んでいます。三浦さんは「一口にアンモナイトといっても、歴史ごとに大きさや形状も異なるんですよ」と教えてくれました。
さらに「最近見つかった新種も展示されています」と三浦さんが説明してくれたのが、2015年に国内で初めて歌津で発見された「嚢頭(のうとう)類」の化石です。嚢頭類は、3億6000万年以上にわたり、赤道近くの浅い海に生息した節足動物でエビに近いといわれていますが、いまだ謎の多い生き物。歌津で発見された嚢頭類には新種も含まれ、その中のひとつは「キタカミカリス・ウタツエンシス」と名付けられました。
また、展示室前のホールには、ドイツで発見された「ステノプテリュギウス」、イタリアで発見された「ベザノザウルス」の迫力満点の化石も展示されています。歌津の民間施設で週末を中心に行われている化石発掘体験は子どもたちに人気で、すぐに定員が埋まることも多いそうです。
宮城県本吉郡南三陸町歌津字管の浜60[ 地図 ]
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Tel.0226-46-1341(南三陸町教育委員会事務局生涯学習係)
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