Vol.030
仙台平野の最南端に位置し、海と山に囲まれた山元町。豊かな自然や温暖な気候が、果物や野菜、鮮魚など、多彩な食材を育みます。そして、町内にはそれらの美味をさまざまなかたちで楽しめる店がいっぱい!ぜひ、現地で旬の味覚を堪能してみてはいかがでしょうか。
※新型コロナウイルス感染拡大により、記載の情報が現況と異なる場合がございます。お出掛けの際には事前にご確認ください。
※価格はすべて税込です。
果物や野菜、鮮魚など、豊かな食に恵まれている山元町。JR常磐線・坂元駅のすぐそばにある農水産物直売所「やまもと夢いちごの郷」には、旬の食材が一堂にそろいます。2023年2月に開業4周年を迎えた施設は、これまで200万人以上が訪れている町の一大スポットです。
多くの食材が並んでいる店内。冬から春にかけては食べ頃を迎えたいちごを求める人で連日にぎわいます。取材当日は平日の午前中であったにも関わらず、多くの人がいちごの箱を抱えていき、次々といちごが棚からなくなっていきました。
特産品として知られるりんごや、テレビでも取り上げられたことがある山元町産のさつまいもなども人気です。また、磯浜漁港などで水揚げされる新鮮な魚介類、食材を活かした加工品なども購入できます。
施設内は買い物だけではなく、観光途中の腹ごしらえや休憩にもおすすめ。季節によってほっき飯やはらこ飯なども販売されるほか、町の洋菓子店「Petite Joie」特製のジェラートやソフトクリームなど山元町の食材を活かしたスイーツが楽しめます。
また、2年前に誕生したフードコートでは、仙台の愛子地区で人気の「そば処 蕃山山元店」、地域の食材を活かしたイタリアン「ネギ・イタリ家」、県南を中心に展開する「らーめんせん家山元店」が営業。専門店の本格的な味わいを楽しむことができます。
宮城県亘理郡山元町坂元荒井183-1[ 地図 ]
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Tel. 0223-38-1888
穏やかな気候の山元町は、東北有数のいちごの産地として知られています。“食べる宝石”と呼ばれる「ミガキイチゴ」などを生産している観光農園「ICHIGO WORLD」では、例年1月から5月までいちご狩りを実施しており、30分間のいちご食べ放題が楽しめます。
いちご狩りは、日によって2品種のどちらかのハウスで行われます。一つは、ICHIGO WORLDオリジナル品種で蜜のような芳醇な香りが特徴の「ハナミガキ」、もう一つは糖度が高く濃厚な風味が楽しめる「よつぼし」です。
ICHIGO WORLDのハウスはどちらも広々としており、きれいに整えられています。また、いちごは地面から1mほどの高さで栽培されているため、幅広い年代の方にいちごが摘み取りやすくなっています。ハウスなので雨の日でも安心していちご狩りが楽しめます。
敷地内には直売所もあり、農園で採れたいちごをはじめ、いちごを使ったスイーツ、ジュースなど、多彩な商品が取り揃えられています。なかでも「かわまちてらす閖上」などで人気のICHIBIKOの「いちごミルクのもと(1,300円)」やお酒、新鮮ないちごがお得な価格で手に入る“訳あり品”などが売れ筋です。旬のいちごをたくさん味わいたい方は、ICHIGO WORLDを訪れてみてはいかがでしょうか。
宮城県亘理郡山元町山寺字桜堤47[ 地図 ]
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Tel. 050-3186-4793
2015年から山元町で営業を続ける「Petite Joie(プチット ジョア)」。「私たちのケーキを通じて、山元町のフルーツのおいしさを味わってほしいですね」と話すのは、オーナーシェフの伊藤さんです。
塩竈市出身の伊藤さんは高校でお菓子作りについて学び始め、東京や仙台の洋菓子店などで修業を重ねた後、同店をオープンしました。当初は別の場所で開店する構想だったそうですが、山元町での復興ボランティアなどの経験から、現在の場所に店を構えたと言います。
「山元町の復興の力になりたいと思ったのですが、私が何かをしても人力は1にしかなりません。しかし、地域の素材を活かしたケーキを作れば、30くらいの人力になれるのではと思いました。」
その言葉通り、伊藤さんが手掛けるスイーツはどれも山元町産のフルーツが中心。「フルーツや卵は、町の農家さんから直接仕入れています。『その日に一番おいしいものを』ということで、例えばいちごであっても日によって品種などが変わります。素材に合わせるケーキ屋なんですよ」。同店では生クリームやカスタードクリーム、生地なども、フルーツの味わいを引き立たせることを念頭に、味わいや食感を考えているそうです。
「いちごのショートケーキ(420円)」は、同町の燦々園(さんさんえん)で朝摘みされたいちごを贅沢に使用しています。コクを活かしつつ甘さを抑えた生クリーム、ふわふわのスポンジケーキといちごの相性が抜群の看板商品です。
「いちごのタルト(450円)」の生地は、ショートケーキのスポンジ生地とは対称的に、しっかりとした食感。「やわらかいものは、とことんやわらかく。かたいものは、とことんかたくするというのが好みなんです」と伊藤さん。いちごと生クリーム、カスタードクリームの甘さと酸味のバランスも絶妙です。
また、フルーツ以外のものでは「クッキーシュークリーム(210円)」も人気。注文が入ってからザクザクのクッキー生地に詰められるカスタードクリームは上品な甘さで、バニラビーンズの優しい香りも楽しめます。
「これからも農家の方々の頑張りをケーキで表現して、山元町の魅力を発信できれば」と伊藤さんは語りました。店には落ち着いた雰囲気のイートインスペースも。スイーツと共に、こだわりのコーヒーなどをいただくことができます。
宮城県亘理郡山元町山寺字畑中59-3[ 地図 ]
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Tel. 0223-36-7605
山元町や周辺地域の食材を使った、おいしい料理を楽しめるのが「旬魚酒房 金八」です。店主の引地さんは丸森町にある「金八寿司」で10年ほど修業し、1983年に山元町の坂元地区に同店をオープンしました。
オープン以降、地元をはじめ多くの人から愛されていましたが、東日本大震災の津波によって、店舗が全壊。一度は閉店も考えていたそうですが、お客さんたちの声に背中を押され、2014年6月山下駅の近くに「旬魚酒房 金八」としてリニューアルオープンしました。
ランチタイムでは、握り寿司や海鮮丼といった新鮮な魚介類が味わえる定番メニュー、焼き魚や特製のなめろうなどを提供する日替わりランチ、季節限定のほっき飯やはらこ飯、牛たん定食などをいただくことができます。
「海鮮丼 上」(2,400円)には大トロや牡蠣、穴子など、宮城県産のものを中心に豪華なネタが10種類以上も。取材日には磯浜漁港で水揚げされた、大ぶりなほっき貝の刺身も盛り付けられていました。鮮度がいい魚介は、旨味が濃厚でどれも絶品。やさしい味わいの酢飯とぴったりの相性でした。
また、夜のメニューには、海鮮や焼き物のほかに、椎茸などでつくる地元ピザといったお酒に合うメニューが盛りだくさん。全国各地から集めているというこだわりの日本酒もおすすめで、利き酒などを楽しむこともできます。
宮城県亘理郡山元町浅生原新館前92-3[ 地図 ]
HP:https://kin8sushi.jimdofree.com
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Tel. 0223-23-1564
2018年に展示室がリニューアルした、「山元町歴史民俗資料館」。展示資料を通じて、山元町の成り立ちや文化、風土について学ぶことができ、定期的に企画展も開催しています。今回は学芸員の山田さんに案内していただきました。
展示はテーマごとに3つのエリアに分かれています。展示1のテーマは「原始・古代のやまもと」。山田さんが「一番の目玉」と語るのは、横穴墓というお墓で発見された線刻壁画です。これは東日本大震災の復興事業として実施された、集団移転用地内の「合戦原遺跡」の発掘調査で発見されたもの。日本で初めて線刻壁画の実物が移設保存され、常時、実物を見学できる壁画は国内でもここだけです。
「土が崩れやすいといった課題があり、当初、専門家の方たちには『移設は無理』といわれました。しかし、1年以上かけて新たな手法を開発しました」と山田さん。
壁画は約1400年前の飛鳥時代から奈良時代に刻まれたもので、鳥、人、家などと考えられる図柄が数多く描かれているものは東北地方でも非常に珍しく、学術的に高く評価されています。
また、展示1に展示されている、約2,000年前の津波の痕跡が残る土層は、山田さんが東日本大震災当日に発見したといいます。「3月11日の午前中に津波の痕跡を発見し、午後に引き続き現地で発掘作業をしている時に震災が発生しました」。歴史を学ぶことが、現在や未来への学びになることを実感できる展示です。
展示2は、鎌倉時代から江戸時代までの町の歴史などを紹介する「中世・近世のやまもと」。城跡から見つかった史料や、江戸時代に山元町坂元地区一帯を治めていた伊達家家臣・大條家ゆかりの品々などを見学できます。
展示3は「近代・現代のやまもと」。ここでは「赤痢菌」を発見し、山元町で晩年を過ごした志賀潔の史料や歴史などが紹介されており、近年、新型コロナウイルスの影響から注目を集めています。また、古民家再現コーナーでは、実際に再現された土間に上がることも可能です。
ミュージアムショップでの一押しは、文房具などの「せんこくん」グッズ。線刻壁画をモチーフにしたキャラクターは、絶妙なゆるさ。山田さんは「LINEスタンプなどもあるので、せんこくんを通じて、町の歴史や震災のことに興味を持ってもらえればうれしいですね」と語りました。見所いっぱいの資料館で、山元町の歴史や文化に触れてみてはいかがでしょうか。
宮城県亘理郡山元町浅生原字日向13-5[ 地図 ]
HP:https://www.town.yamamoto.miyagi.jp/soshiki/35/14302.html
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Tel. 0223-37-0040
2017年に亘理町でオープンし、2022年5月に山元町へ移転して、営業を開始した「Brot Dorf(ブロートドルフ)」。店名はドイツ語で「パンの村」を意味しています。オーナーの境さんは専門学校を卒業後、いくつかのパン屋へ勤務すると共に、東京での勉強会に何度も参加して腕を磨き、理想のパン作りを追求しました。
境さんは「海外のように、食事としてしっかりおいしいパンを目指しています。そのために温度や湿度の管理を徹底して、発酵や熟成の時間もきっちり取るという基本に忠実なパン作りをブレずに行っていきます」と語ります。
店内のショーケースは、パリッとした食感のものやドイツパンなど、バラエティ豊かなパンが並びます。その中の1番人気は「クロワッサン(250円)」。生地を粉からこね上げ、外はサクサク、中はふんわりとした食感に。甘くないパン本来の味わいを大切にしています。
「ドイツパンは見た目は地味ですが、素朴で毎日食べても飽きないおいしさが魅力です」と境さん。伝統的なドイツの食事パン「ラウゲン・ブレッツェル(220円)」は塩味がきいていて、ビールにもぴったり!また甘さを抑えた自家製ミルククリームをサンドした「ミルクフランス(260円)」なども人気。フランスパンは小麦の豊かな香りと味わいを堪能することができます。
「シナノゴールドアップルパイ(350円)」には、山元町産のりんごがゴロッと入っており、旬の味わいをしっとりしたパイ生地と共に味わうことができます。
境さんは週1回仙台の専門校で講師も務めており、営業日は基本的に木・金・土・日の週4日。「大量生産できない分、一つひとつのパンに向き合っています」といい、さらに今後はより地域密着型の店を目指したいと語りました。「山元町は食材も豊かですし、のどかな雰囲気が気に入っています。店を拡大することよりも、より深く地域に根ざしていきたいですね」。
宮城県亘理郡山元町山寺町東63-2[ 地図 ]
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