Vol.019
江戸時代には奥州街道の宿場町として、明治時代には国や県の出先機関が置かれた官庁の町として発展した大河原町。今回は、その歴史を体感できる施設から町の人に愛される美味の数々、自然に包まれたアトリエまで、多彩な魅力をご紹介します。
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※価格はすべて税込です。
昔から大河原町は菓子づくりが盛んな地域です。その理由は定かになっていませんが、今でも町内にはたくさんの菓子店が営業しています。1933年に創業した老舗菓子店「菓子匠 喜多屋」も、その一つ。ショーケースや陳列棚には、店で一つひとつ手作りされた和菓子や洋菓子が、ずらりと並べられています。
「伝統的な作り方を大切にしながら素材を厳選し、今らしい味にしています」と説明してくれたのは、同店の和菓子を手掛ける3代目の中村さんです。中村さんは東京の菓子作りの専門学校を卒業後、両国・蔵前の和菓子店での修業を経て喜多屋で菓子作りを始めました。ちなみに、見た目も楽しい洋菓子は中村さんのお姉さまが作っています。
中村さんが開発した和菓子の一つが、大河原最中「鰐口(141円)」。大河原町の大高山神社に奉納された仏具・鰐口からインスピレーションを得た一品で、香ばしく焼いたもち米の最中皮に、丁寧に炊いた自家製あんがたっぷり。取材中にも「名前がわからないんだけど、あの最中ありますか?」と味の記憶を頼りに買い求めるお客さんの姿がありました。
また、根強い人気商品が「かりんとうまんじゅう(97円)」。食感を保つために冷凍で販売されており、自然解凍していただくのがおすすめですが「1分くらい手で温めてから食べてもおいしいですよ!」と中村さんからのアドバイスに従い、両手で包んでからほおばると、カリッとした皮、しっとりしたあんこの食感と甘みが絶妙で、何個でも食べられそうなおいしさでした。
同店では季節ごとに限定のお菓子も登場し、例年4月には町の名物・一目千本桜にちなんだ団子などが、5月からは「かしわ餅」が販売される予定です。
中村さんは「特に店を大きくしたいとは思っていません。それよりも地元の方たちに長年愛されるような店を目指して、丁寧にお菓子を作っていきたいですね」と、お菓子作りにかける想いを明かしてくれました。
宮城県柴田郡大河原町大谷末広55[ 地図 ]
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大きく「飴」と書かれた、青い幕が目印の「蔵王の昔飴本舗」。その工場直売所で、同店2代目の佐藤さんにお話しを伺いました。「私の父が仙台の日立家(ひたちや)さんで5年間丁稚奉公した後、1959年に創業しました」。佐藤さんによると、かつては宮城県内にも飴の専門店がいくつかありましたが、現在営業しているのは同店のみになっているそうです。
「平成元年頃から、果物や海産物など食材王国・宮城の豊かな素材を活かした、地産地消の飴作りに力を入れるようになりました」と佐藤さん。そうして生み出された多彩なオリジナル商品は品質の高さが評判となり、度々、テレビなどで取り上げられています。そのため同店には宮城県内はもちろん、北海道から鳥取まで、酒蔵や醤油屋などさまざまな業種から飴作りの依頼が舞い込んでいます。
その評価を支えているのが、先代から伝わる昔ながらの飴作りの技術と経験です。「当店では大手メーカーと異なり、一つひとつ違う原料や製法で作っています。飴作りは、ただ素材を加えればいいというものではありません。何よりも味にこだわるため、商品ごとに原料を細かく変えたり、季節によって作り方を変えています」と佐藤さんは説明してくれました。
季節限定の飴も多くの種類があり、春季限定商品として5月まで販売されているのが「桜あま玉(400円)」。淡いピンク色の飴を一粒口にふくむと、バターの濃厚な甘さの中に、塩漬けにされた桜の花と葉の塩味がアクセントになり、爽やかな風味が広がります。
また、昔の駄菓子で売られていた飴をイメージした「ちびーず」シリーズも人気で、サクサク・カリカリとした食感が、ついやみつきに。「今後はもっと多くの人に、店の飴を届けたいですね」と佐藤さん。店頭に飴の自動販売機を設置するなど、新たな試みも。営業日などはホームページで公開していますので、お立ち寄りの際はご確認ください。
宮城県柴田郡大河原町大谷字西原前92-1[ 地図 ]
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自然豊かな里山に位置する「とんとんの丘 もちぶた館本店」。広大な敷地には、自社農場で育てられた豚肉の直売所やバーベキューコーナー、動物とふれあえるスポット、アスレチック遊具、さらには温泉まであり、子どもから大人まで、のんびりと楽しむことができます。
直売所では自社農場で育てられたブランド豚肉「和豚もちぶた」の精肉や惣菜、オリジナルの加工品などを購入することができます。和豚もちぶたは、種豚づくりから生産環境、飼料、流通まで、すべてにこだわって生み出されたブランド豚肉。非常に柔らかく、もちもちとした歯ごたえで、脂身はさっぱりしていて甘味があり、臭みがないのが特徴です。
直売所に隣接するバーベキューハウスでは、手ぶらで楽しめるバーベキューの他、とんかつプレート(1,100円)やハンバーグプレート(900円)などでも、和豚もちぶたを堪能することができます。
また、敷地内にはカピバラやダチョウといった珍しい動物をはじめ、ウサギやヒツジ、ヤギなど10種類以上の動物が飼育されており、餌やり体験も可能。見晴らしのよい展望台や大きな滑り台、ブランコなども設置されています。
からだを動かして汗をかいたら、直売所に隣接する「おおがわら天然温泉いい湯」へ。源泉掛け流しの温泉で、身も心もリラックスすることができます。
宮城県柴田郡大河原町新寺北185-11[ 地図 ]
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Tel.0224-51-5811
2013年にオープンし、『ミシュランガイド宮城2017特別版』に掲載されるなど、本格的なインドカレーが味わえると評判の「ケララキッチン」。ケララとはインド最南端に位置する地域で、同店のオーナーシェフ・カーダーさんの出身地です。カーダーさんは、オマーンの5つ星ホテルや大使館などでシェフを務めていた経歴の持ち主。「南インドの料理はやさしい味のものが多いので、日本の方でも食べやすいですよ。店の料理も、特に日本人向けにアレンジなどはしていません」と気さくに話してくれました。
同店のインドカレーは、たくさんのスパイスを使用し、小麦粉などは使用せず、注文が入ってから手作りされます。今回は「本日のカレー」から2つ・ベビーナン・ハーフライス・チキン・サラダ・ドリンク・デザートがセットになった、一番人気の「ミックスターリー(1,050円)」をいただきました。
この日選んだカレーは「チキンカレー」と「ベジカレー」。「チキンカレー」は鶏肉とスパイスの旨味がたっぷり。「ベジカレー」は豆や野菜がふんだんに入ってヘルシーなおいしさでした。
ベビーナンは軽やかな食感なので、大きくてもペロリと食べられます。「女性の方も大きさに驚きますが、簡単に食べていかれますね」とカーダーさん。付け合わせのデザートやラッシーなどもすべて手作りで、お手頃な価格で南インドの味わいを堪能できます。
その他にもさまざまなカレーに加え、メニューには野菜や豆を中心にした南インドの定食「ミールス(1,480円~)」、近年人気のビリヤニ(1,200円~)などが並んでおり、すべてテイクアウト可能。暖かい日には、大河原町周辺の公園や川岸など自然の中で食べるのもおすすめです。
宮城県柴田郡大河原町字小島2-1[ 地図 ]
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大河原町中央公民館の隣、外から見える店蔵が深い歴史を感じさせる「佐藤屋邸」。敷地内には明治時代から昭和初期にかけて建てられた屋敷や店蔵などが並び、2017年には、その歴史・文化的な価値が認められ、国の登録有形文化財に指定されています。
「歴史の長さに加え、部屋ごとに木材を変えるなど、丁寧に造られていることが評価されたのだと思います」。そう説明してくれたのは佐藤源之さん。元々、この屋敷は佐藤さんの先祖・権左衛門が1700年に呉服商として店を構えたことが始まりで、9代目にあたる佐藤さんは、この施設を活用する「佐藤屋プロジェクト」を展開。町と一緒に、さまざまな企画を立ち上げています。
かつて、この地域は旧奥羽街道・大河原宿として賑わい、事業を広げた佐藤屋は1850年には4代目が醤油醸造を創業。5代目は経営活動の一方、大河原町議員や郵便局長などの要職を歴任しました。さらに6代目と協力し、東北本線の誘致活動や、教育・福祉・文化といった公益活動への寄附を積極的に行うなど、地域の振興に尽力。7代目は味噌・醤油の販路を東北地方から東京方面にまで広げ、660人の小作人を抱える仙南一の大地主でしたが、戦後の農地開放でほとんどを手放したそうです。「この地域に住んでいる高齢者の方が、施設を見て『子どもの頃、遠足で来た』『味噌醤油工場で働いていた』と懐かしんでくれることもあります」と佐藤さんは話しました。
中庭を囲んでロの字に建てられた屋敷の母屋は、随所に当時の面影を残す近代和風建築。明治時代に造られたままの和室、モダンな洋室、茶室なども残っています。「保存状態が良く、窓やふすまなども建設当時のままです」と佐藤さん。
佐藤屋邸はひな祭りや、桜まつり、秋の企画展などの際に一般公開されており、貴重な建物を見学することができます。佐藤さんは「大河原町の魅力を知ってもらうために、地域内外の多くの人に訪れてほしいですね」と想いを語りました。ぜひ公開時には足を運び、地域の歴史を体感してみてはいかがでしょうか。
宮城県柴田郡大河原町200[ 地図 ]
HP:https://www.satouya-project.com
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空に向かって枝葉を広げる樫の木をはじめ、周囲の木々に守られるように開けた空間。ここが、ものづくりのアトリエ「うらにわあとりえ」です。取材日にはトランペットの演奏会が行われており、その伸びやかな音色とアトリエに流れる穏やかな空気が相まって、まるで桃源郷に入り込んだかのようでした。
「週末にはさまざまな分野の作家が集まり、ものづくりのワークショップを開催しています」。そう話すのは、管理人の阿部さんです。取材日は石巻の陶芸家がワークショップを開催しており、親子が土いじりを楽しんでいました。「自然の中でものづくりをしたり、遊んだり、子どもを連れたご家族がたくさんいらっしゃいます」と阿部さん。毎月第2日曜日には音楽ライブなども行われるマルシェが開催されています。
阿部さんは大学で美術やデザインを学んだ後、木工品、家具作りの職人に。その端材を利用して2019年頃から制作している「にゃんこけし」は、猫好きの間で大人気です。このにゃんこけしを通じて、多くの作家とコラボレーションするなど交流が広がったそうで、「一人ひとりが異なる才能を持っていることを知りました」と振り返っていました。
そして偶然、現在の土地を知った阿部さんは「それぞれの才能を発揮したり、披露したりできる場を作ろう」と、2020年6月にうらにわあとりえをオープンしました。また、「他の作家と交流することで、新たなものが生まれる場になればいいですね」と語っていました。
元々、農家の納屋だった築80年の建物は、半年以上掛けて改修。1階は阿部さんのにゃんこけしをはじめ、革細工や陶芸など、作家のこだわりの作品が所狭しと並べられているギャラリーとなっており、2階には周囲の自然を眺めながら寛げる「樫の木テラス」などが設置されています。
阿部さんはアトリエについて、「目標としている完成形はなく、常に変化することを楽しんでいきたいです。ものづくりに情熱を持っている作家たちで切磋琢磨しながら、盛り上げていけたらいいですね」とやさしい表情で話してくれました。
宮城県柴田郡大河原町福田堀内51[ 地図 ]
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